9月ごろある依頼が来ました。生徒は3年生で志望校は京大工学部。
聞くと結構前から、そのセンターに来ていた案件だったそうですが、講師が全く決まっていなかったらしいのです。
それもそのはず、指導場所は和歌山でした。
とりあえず残り数ヶ月、やれる限りやってみようということで引き受けることになりました。
やってみるとそれなりに実力はありかなりいい線にいました。
残り数ヶ月でしたので、過去問を中心に二次試験対策を主に詰めていきました。
やってみて大変だったのはなんと行っても時間です。
平日は夕方からの指導でなんとかなったのですが、困ったのは休日でした。朝9時からの指導を頼まれましたが、京都からでは朝が早すぎる。とてもとても辿り着かないということで、前日は和歌山のカプセルホテルで寝泊まりして指導に行きました。
センター試験ではそれなりの成績を取ってくれたので、志望通り京大工学部を受けることになりました。
彼は親戚が京都に住んでいたので、入試のまではそこに泊まっていました。入試前日、私は京都の親戚宅に呼ばれました。まあ、入試の前日にああだこうだすることは学力的には意味がないのですが、激励と応援のために向かいました。
そこではなにか問題でも解くのかなと思っていましたが、彼は精神統一のためかひたすらにピアノを引いており、私はただただそれを聞いて時が流れました。
京大の入試が2日間行われてその2日の終わり、また私は彼に会いに行きました。そこで顔を合わせると、彼は見るからにニコニコしていたので、ああできたんだたとその時は思いました。
しかし、よくよく話を聞いてみると「ところどころ分かりづらいところがあったが、なんとかごまかした」「答えがあってるから多分大丈夫」など、不吉なことをいっていたのを聞いて、一転これはヤバそうだと思い、私は「お疲れ様。でも世の中何が起こるかわからんから、とりあえず前期のことは一旦忘れて、出している後期の阪大に向けてまた切り替えて頑張ろう」とアドバイスしました。
かれは「なんで今さらまた勉強しなあかんねん」と言いたそうな目で、大変不満そうではありましたが、そこはなんとか押し切って勉強を続けさせることにしました。
国公立大の入試、特に京大の入試というのは答えがあっているかどうかよりも、答えに至る論理が正確かどうかが重視されるのです。
そういった点で模試とは採点の基準が結構違います。
模試で良い判定が出ていた受験生が、入試で成功しない原因は割とこういうところにあります。
答案用紙の論理は注意深く書かないと、最悪答えが合っていても0点になるということもあります。
京大の発表日、残念ながら彼は不合格でした。
後期試験は発表の10日後で、時間はそれほどありません。勉強を続けさせておいて正解でした。
かれは後期の阪大にはしっかりと合格し、阪大に通うことになりました。