ある時、家庭教師センターから医学部志望の方を紹介いただきました。
今度の生徒は非常に真面目な子ではありましたが、どうしても学力が足らず、苦労しそうな予感がありました。
彼は語学に興味があり、高校のうち一年間イギリスに留学していました。それなりに高校生活をエンジョイされて、いざ高3になられたとき私が紹介されました。
その時、手始めに青チャートを解いていただいたのですが、これが最初から全く手も足も出ないという状態でした。
そこから彼にとっては地獄の日々が幕を開けました。医学部となると数学をなんとかしないとどうにもならないので、まずはひたすら青チャートを解かせました。わからない問題を潰しに潰し、ひたすら問題を解いていただきました。
現役、1浪はなかなか学力が到達せず、不合格。
2浪目にしてようやく青チャートのレベルをクリアできるようになり、力がついてきたことを実感し始めました。それでも成長の伸びは鈍くまだまだ見通しは明るいものではありませんでした。
さすがに2浪目でしたので彼も疲れてきて、私に「先生、おれが本当にダメで見込みなかったら教えてや」と言ってくる始末でした。
またそれを聞いてお父さんからは、「俺も4浪やった。お前も頑張れ。俺もさすがに3浪目のときな疲れて鴨川のほとりでボーっとしてたこともあった。」などと励ましになっているのかわからないを言われたりもしていました。
私からは、「別の道を探すなら、2浪目の今が最後やで。3浪以降は企業への就職で不利になる可能性があるよ」ということを伝えておきました。
彼は英語や国際交流に興味があり、これまで現役・1浪と早稲田の国際教養学部の推薦入試だけは受験していました。そして3浪目も同じように早稲田の推薦は受験することにしました。
その受験は出願の際に課題を提出し評価されます。そして2浪目は面倒だったのか1浪目と全く同じものを提出したそうです。
しかしなぜかそれが合格してしまいました。
そうすると、お母さんは我が子が早稲田に合格したと大喜びし、とたんに医学部という目標はどこかへ消えて行ってしまいました。
まあ医者になることだけが、道ではありません。彼は他に興味のある分野があって結果的にそこに向かうことができたので、それはそれで良かったのではないかと思っています。