京大・阪大・医学部受験のあれこれ

京都大学大学院卒のプロ講師・家庭教師によるブログ

3兄弟

いつものように家庭教師センターからの依頼で面談に行くことに。

京都の有名な私立の難関進学校に通う男の子で高校3年生でした。

 

普通はこの学校の上のコースの生徒は、中学校ではクラブ活動を頑張って、高校になるとやめて学業に専念するというのが一般的です。

しかし今回の生徒は、クラブ活動にかなり力を入れているらしく高校でも柔道部で頑張っていました。

実力も中々のものらしく、スポーツクラスの生徒をも負かすほど。しかも学業もさすがは進学校というだけあってそこそこできて、なんと京都大医学部志望ということでした。

まさに文武両道です。

 

まあ、おわかりかと思いますが、京都大学医学部というところはちょっとやそっとではなかなか通らない場所です。ですので、授業が始まると基本の部分は自分で学習を進めていただき、こちらは上のレベルの問題を解き進めていきました。

 

迎えたセンター試験

センター自体ははそこそこ良い点をとってくれました。しかし京都大学センター試験の配点は低いので、それはあまり影響しません。

 

それよりも問題だったのは、彼がセンター試験前後に風邪を引いてしまったことです。

 

そのせいかどうかわからないのですが、とりあえず滑り止めで受けて頂いた私立大学が片っ端から落ちていきました。

 

お家はお医者さんでしたので、入試の日の朝、「これ一発打ってけ」と注射を打ってから受験に行ってたようです。(おそらくアドレナリン注射)

 

それでも、一向に私立大学が受からない状況が続きました。

 

普通の家庭教師ならそんな生徒を励まし次の入試に送り出すと思うのですが、東海大の受験の直前、私は彼に

「ええかげんにせえ。」

「東海は君にとったら滑り止めの滑り止めや。2日間あって1日も通らんわけがない。しっかりやれ。」(東海大学の1次試験は2回チャンスがある)

と檄を飛ばしました。

家庭教師というのは集団塾と違って一人の生徒を教えるので、当然その生徒の能力をは切り分かります。だいたい秋ごろになると、この調子で行くとこのあたりの大学に通りそうだなと検討がついてきて、直前期にはここには通ってもらわないと困る、ここは通ればいいな、などと割と生徒の行き先が予想できてくるわけです。

 

この彼の場合は、普通に考えてこれだけ私立大学に落ち続けるといいうのはおかしかったわけです。

 

しかしながら、こういう生徒は意外と結構います。

実力はあるのに本番で発揮できないタイプです。そんな生徒の問題点というのは当然学力にあるのではありません。

メンタルです。

 

試験会場に入ると周りの受験生がみんな自分より賢く見える。

いざ始まって問題を見るとこれまたどれも難問に見える。

思いつくはずの解法が思いつかない。いつも覚えていた公式が出てこない。

本当になんでもない足し算をミスる。そしてミスっていることに気づかない。

焦れば焦るほど正確性を欠いていきます。

 

彼のように柔道で鍛えられていそうな子でもこういうことは起こるんです。

ただ「努力は嘘をつかない」といいますが、これまで誠実に積み上げてきた方というのは強いものです。

 

さすがに何度受けて入試慣れしたのか、私の檄が聞いたのかわかりませんが、東海大はすんなり合格しました。

その後京大の医学部は残念ながら通らず、結局彼は現役で東海大に進学することになりました。

 

それからしばらくして成績開示があってわかったのですが、彼はトップ合格だったそうです。

受験が終わってからはのびのびとして、大学でははテニスをすると言って楽しそうに旅立っていきました。

ちなみに、進学先に柔道部の先輩がいたらしく、華やかなテニス部生活は崩れ去って、引き続き柔道を続けたそうです。しかも大会で優勝するほどやり込んでいたみたいです。

 

その後、そのご家庭にから次はその弟の指導を受けることになりました。

医学部受験の家庭教師をしているとこのように一つのご家庭の兄弟を全員指導するということもめずらしくありません。

 

弟くんもスポーツマンで彼はテニスをしていました。彼は指導開始時、お兄さんほど学力が高くありませんでしたが、それでも教育大系の高校でそれなりの学力を持っていました。

 

現役では合格できず、浪人となったとき、彼は最初宅浪したいと言ってきました。

その時点で実力は相当あったので宅浪でもいけるなと思いましたが、周りに同じ方向を向く受験生もおらず、毎日のリズムを作ってくれる授業もないとなるとそれはそれでリスクですので、一応河合塾は行っとけとアドバイスしました。

 

彼はやはり優秀で予備校が始まって夏になる頃には、偏差値70を超えるところまで成績を持っていきました。

 

そして秋になった時、ご家庭と本人と推薦入試をどうするかと相談しました。

正直私は彼だったら推薦入試は通るだろうなと思いました。

しかしながら近畿大学を除いて殆どの大学の推薦入試は専願になります。ですので受かってしまうと行かないといけません。蹴ると高校の後輩に迷惑をか蹴ることになってしまいます。

本人もご両親も受けといたほうがええやろうということで、愛知医科大を受けることになりました。

案の上、合格。

ご家庭の方は受かってしまえばもっと上を目指せたはずだと次はどこを受けようかなどと話出していましたが、それはできません。ご両親は少し不満そうではありましたが、本人はそこで満足していましたので、そのまま進学しました。

 

弟さんも無事医学部へ進学でき、次さらに妹さんがおりました。

一つの家庭で3人、4人の兄弟を全員の医学部受験のサポートをすることが多々あります。そんなとき下の子を教える頃には最初に教えたお兄さんは医師免許を取って立派に働いているということもめずらしくありません。

 

家庭教師は1対1なので相性というのがつきまとってきます。学力的なものと性格的なものと合わせて、今回の妹さんは残念ながら、私が協力させていただくことはできなかったのですが、後ほどお伺いすると、この方は推薦で金沢医科大に合格したそうです。