塾・家庭教師時代④ ー 家庭教師一本で活動を始める
京都で塾をしていた頃、ある日突然見知らぬ番号からFAXが送られてきました。見るとそこは家庭教師センターで、講師登録をしてほしいという内容でした。
講師募集というのは通常、センターが募集を出して、募集に対して講師が応募するというのが普通です。センターからいきなり打診がくるというのは初めてでびっくりしたのを覚えています。
正直その当時は京都の塾と家庭教師でぎっしりと時間が埋まっていたため、面接に行く時間はないと伝えると、向こうからやってくると言って塾の授業の合間5〜10分で済ませてしまいました。
そのセンターは理系の先生がほとんどいないらしく、かなり焦っていたようですが、それから家庭教師の依頼がかなり多く来るようになりました。
医療系予備校をやめる頃には、ありがたいことにこれまで家庭教師で教えていた生徒の兄弟姉妹の案件や、知り合いの家庭への紹介案件などがかなり増えていました。
また、いくつかの家庭教師センターから毎年たくさんの依頼を頂いてもいました。
ですので、これ以降は家庭教師専業で活動をしていくことになります。その後、自ら塾・家庭教師センターを開き現在に至っています。
その間にあったいくつかの案件を紹介してみようかと思います。
まず、家庭教師専業になって間もない頃、一度だけ広告を出した事がありました。それを見て一人応募してくれたご家庭がいました。その生徒は京都で当時偏差値40代の私立高校に通う方でした。
目標は医学部。
お母さんは同志社の内部進学で大学受験をあまり知らない方で、お父さんは国公立大医学部を出られたお医者さんでしたが、単身赴任中で子どもの教育には余り関わられていませんでした。
とにかくお母さんが強烈な方で、毎回指導に行くたびに罵詈雑言を浴びせられました。
しかしながら、生徒の学力はまともに勉強をしてきておらず完全に0状態。私は相当厳しいことをお母さんにお伝えしましたが、ほぼ聞き耳を持ってもらえず、関係のない理由で突然授業をキャンセルするようなことが続く有り様でした。
私はこれはまずいということで、1,2ヶ月でお断りをしました。
後日、同じ方へ英語を教えていた講師から話を聞くと半年間教えたそうですが、報酬は1円も支払われなかったとのことでした。
これを聞いては私は個人でやることのリスクを思い知って、かなり警戒するようになり、メインは家庭教師センターを通して指導することにしました。
その経験を通して私が思ったのは、これまでもそうでしたが家庭教師をする上で、やはり信頼関係は欠かせないということです。
講師が「こうすれぼもっと良くなる」という方法をどれだけ伝えても、それを実践してもらえなければ意味がありません。そのためには生徒から信頼を得なくてはいけませんし、ご家庭の方からも得なくてはいけません。
ご家庭の方は、学習面のみならず、受験する大学について、生活について、メンタル面について様々な質問をうけ、家庭教師を頼りにします。
当然、講師がその期待に応えてサポートし、信頼を得るよう努力しないといけません。
一方で、やはり「学ぶこと」「教えること」というのは人間のすることなので、どうしても結果が出るまでに時間がかかります。
願わくは、始めのうちは完全信頼できないまでも、一度決めたら一定期間は家庭教師の指導方法を取り入れ、続けることをしてほしいなと思います。
逆に、家庭教師と生徒・ご家庭でよい信頼関係を築くことができれば、厳しい状況でも成果を上げられることもあります。
そのしばらくあとで、家庭教師センターから案件をいただいて面談に行くことがありました。
そこで初めて、その生徒が先程の途中で終了した京都の生徒と同じ私立高校に通う生徒だということがわかりました。
しかも医学部志望で、学力を見るとこれまた完全に0状態。
正直これはやばいと思いましたが、家庭教師センターからの依頼でしたので、委託された講師の私が勝手に断るわけにはいきません。
ですので、まず「推薦はお考えですか?」と尋ね、今どのような状況で、現実的に目標がどれほど厳しいものかというものを淡々と伝えました。
すると、そのご家庭ではかなり厳しい先生が来たという評価にはなったのですが、医学部受験の厳しさに関しては認識していただけたようで、逆にこの先生についていった方が良いということで私を選んでいただきました。
その生徒は4浪で私立大の医学部に合格しました。
また、あるとき以前教えいた生徒のご兄弟を指導してほしいという案件が来ることもありました。
その生徒は当時高1だったのですが、依頼の際「先生、この子はくるとこまできました。大学に通してくれとは言いません。まっとうな人間にしてください。」と言われる前代未聞の依頼でした。
いろいろ状況を聞くと、学校のテストで数学は9点でその他の科目も似たりよったり。これは本当に手がかかりました。
朝指導に行くと、まだベッドで寝ています。その彼の足を掴んでベッドから引きずり下ろすところからがスタートです。
勉強もさることながら、何かとトラブルを引き起こしてその都度面倒を見てあげることになりました。
そんな彼も最終的には近大に合格していきました。結局彼との付き合いは今でも続いています。